昔、昆虫少年だった(1)蝉のこと
伊勢の長兄(90)が電話で、今朝、自宅の柿の木で、突然ジャージャーと2匹のセミが鳴き始めてびっくりした。羽根が透明のセミだったと話す。
それはきっとクマゼミだよ。ジャージャーではなくて、シャンシャンと騒がしいのが特徴である。昔はセミといえば羽根が茶色のアブラゼミだったが、その後温暖化が進行して、近頃はアブラゼミはめっきり減って、昔はめったにお目にかかれなかったクマゼミが全盛である。
蝉といえば、春はニイニイと、控えめな声のハルゼミから始まって、夏の到来と共に、ジージーと聞いただけで汗が噴き出して来るようなアブラゼミが、故郷の夏に満ち溢れていた。シャンシャンと鳴くクマゼミは珍しく、その真っ黒な透明の羽根を持った、日本では最大の大きさもあって、セミの王様のよう思っていた。
お盆にお袋の故郷の田舎にお墓参りに行くのが年中行事であったが、そこで山から響いて聞こえたのが、ミーンミーンと繰り返すミンミンゼミの声であった。その美声はいわば蝉の世界のオペラ歌手であろうか。夕方になると、カナカナとヒグラシが鳴く。その日の終わりを告げる晩鐘に似た役割を持っていた。そして、夏の終わりには、ツクツクホーシと繰り返すツクツクボウシが鳴き始め、もう夏も終わりだと告げているように聞こえた。
セミだけでも、これだけの種類を今でも聞き分け、見分けることが出来る。そう、60数年前の小学校の頃は、自分は昆虫少年だった。夏は虫網を持って昆虫を追いかけ山野を巡っていた。とってきた昆虫は、虫ピンで形を整えて標本にし、親父のワイシャツの空箱(内蓋に透明のセロファンが張られて、標本箱に最適だった)に虫ピンで刺して並べ、それが夏休みの自由研究だった。他にも何人か、同じような標本を出したものがいた。当時、昆虫は至る所で見られ、採集は容易であった。(続く、またいずれ)
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