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「蕉園渉筆」(漢文)を読む(70)頼朝真蹟/筆草

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  筆草 弘法麦 2026.9.25 明日はいよいよ金谷郷土史研の講義を実施する。上手い講義にはならないかもしれないが、何とか楽しめる講義にはしたいと思う。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 頼朝真蹟 橋本駅所謂浜名左右、昔源右府与梶原景時唱酬之処、 地有蔵右府真蹟者、 伝云以筆草所書也、此間有五味某者、 近時摸刻貺好事者、 附以筆草一紙豈不一韻事耶 (解読) 頼朝真蹟 橋本駅、所謂 (いわゆる) 浜名 左右 (そう) 、昔 源右府 (げんうふ) と梶原景時、 唱酬 (しょうしゅう) の処、 地 (そのち) に右府 (うふ) の 真蹟 (しんせき) を 蔵 (ぞう) す者有り。 伝に云う、 筆草 (ふでくさ) を以って書する所なり。 この間に五味某 (なにがし) 有 (な) る者、近時 摸刻 (もこく) 、好事者に貺 (たま) う。 附 (つけた) り、筆草 (ふでくさ) を以って一紙、 豈 (あに) 一韻 (いちいん) ならざる事 か 。 (語注) ※ 左右(そう)➔ そば。かたわら。 ※ 源右府(げんうふ)➔ 源頼朝。 ※ 唱酬(しょうしゅう)➔ 互いに詩歌・文章を作って、やりとりすること。 ※ 真蹟(しんせき)➔ 真筆。 ※ 筆草(ふでくさ)➔ カヤツリグサ科の多年草。コウボウムギの別称。(次項参照) ※ 摸刻(もこく)➔ 元になるものとそっくりに彫刻すること。 ※ 豈~か(あに)➔ あとに推量を表す語を伴って、反語表現を作る。 どうして~か。 ※ 一韻(いちいん)➔ 一つのおもむき。 (原文) 筆草 筆草和名其名不一、一曰弘法麦、一曰鬼尭韭、一曰海米、漢名蒒草、一名天然穀、 一名指侫草、一名禹余糧、於波津海浜見之、砂磧中多産焉、葉似菖蒲而小、 実酷如麦、 茎下有細毛、至秋末而枯、采而引之、茎自毛際中断、毛即為筆頭、 根為管、 天然筆清雅可愛也、但可草書、不勝真行之用也 (解読) 筆草 筆草 (ふでくさ) 、和名その名不一つならず。一に曰く弘法麦 (こうぼうむぎ) 。 一に曰く浜麦 (はまむぎ) 。一に曰く鬼堯韮 ( きぎょう にら) 。一に曰く海米 (うみごめ) 。 漢名、蒒草 (...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(69)牧之原

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牧之原大茶園 明治になって、牧之原は大茶園に開発され た 2026.9.24 牛尾の大井川堤脇に、グランドゴルフ場があって、その敷地の角に、近くにあった地蔵石像などが集められている。その中に、白衣観音像が一体ある。白衣観音はすべての観音様の母のような存在で、いわばキリスト教のマリア様のような存在だと聞いた。牛尾のお寺に白衣観音を祀ったお寺があると聞いていた。その案内の像らしいのだが、それがどのお寺だったか。確認のため、今朝、車で行ってみた。しかし、分からずに帰ってきた。金谷郷土史研の講義の中で、それに触れようと思ったのだが、今回は断念する。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 牧之原 牧原一名布引、周囲十数里、赤土或磽确、不宜樹藝、 為無用之地、 近時民往々闢圃作蘿葡、稍佳、旱地穿井漑之、 二三年来又作占城米不応、 其糯者能応、圃稍々増益、可謂見事矣 (解読) 牧之原 牧原 (牧之原) 、 一名布引 (ぬのびき) 、周囲十数里、赤土或いは 磽确 (こうかく) 、 樹藝 (じゅげい) に宜 (よろ) しからず。 無用の地として、近時、民 (たみ) 往々 (おうおう) 闢圃 (へきほ) し、 蘿葡 (すずしろ) を作る。稍 (やや) 佳 (よ) し。 旱地 (ひでりち) に井を 穿 (うが) ち、これを漑 (そそ) ぐ。二、三年来、また 占城 (チャンパ) 米 (まい) を作るが 応じず。 その糯 (もち) は能 (よ) く応 (こた) える。圃 (はたけ) 稍々 (やや) 増益、 見事 (みごと) と謂 (い) うべし。 (語注) ※ 磽确(こうかく)➔ 小石などが多く、地味がやせた土地。 ※ 樹藝(れい)➔ 作物や草木を植えつけること。種芸。 ※ 闢圃(へきほ)➔ 園圃をひらく。開墾する。 ※ 蘿葡(すずしろ)➔ だいこん。 ※ 占城米(チャンパまい)➔ インドシナ半島の占城(チャンパ)原産の稲。干害、塩害に強く、やせた田で育つ、早稲米。 ※ 糯(もち)➔ 糯米(もちごめ)。これは占城米の糯品種を言うのだろう。 (続く)

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(68)県令/卜風雨

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  「東海道五十三次・十一年間の古道を考査する」 金谷コミュニティ委員会広報部編 2026.9.23 土曜日の金谷郷土史研の講義の中で、「東海道五十三次・十一年間の古道を考査する」という金谷コミュニティ委員会広報部で公開している資料を使わせていただくべく、竹下のSさんを訪ねる。了解をいただいた後、今度の講義の進め方などを話し、幾つか不明の点を確認した。何とか、恰好が付きそうである。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 県令 自遠州移封之年、県令至余合八人、独山下為之助、 以厳莅下、以直処己、 民畏而懐徳、坐見移官、 去後十年、民至今称之、余以問于太公、 客歳為司農卿、兼郡将 (解読) 県令 遠州移封の年より、 県令 (けんれい) 、余に至り、合わせ八人。独り山下為之助、 厳しく下へ莅 (のぞ) むを以って、 直処 己 (まさしくおのれ自身) に、 民 (たみ) 畏 (おそれ) て 徳を懐 (おも) う。 坐して官を移すを見る 。 去後 (きょご) 十年、民、今に至りこれを 称 (たた) える。 余、太公に問うを以って、 客歳 (かくさい) 、 司農卿 (しのうけい) 、 兼 (けん) 、 郡将 (ぐんしょう) に為 (な) す。 (語注) ※ 県令(けんれい)➔ 郡司の唐名。「郡司」は、郡を単位として地域的支配を行う郡代官。 ※ 直処(ただか)➔ その人自身。まさしく、その人自身 ※ 坐して官を移すを見る ➔ 人事・官職の異動が目の前で行われるのを見届けること。 ※ 去後(きょご)➔ それより以後。 ※ 客歳(かくさい)➔ 去年。昨年。 ※ 司農卿(しのうけい)➔ 宮内卿(くないきよう)の唐名。 ※ 郡将(ぐんしょう)➔ 郡の長。郡の領主。 (原文) 卜風雨 海国之民預能風雨晦明、遠頻于於海所言尤有験者、 駿之芙蓉在近、山峰雲気相証故也 (解読) 卜風雨 海国の民、能 (よ) き 風雨晦明 (ふううかいめい) に預かる。遠 (遠州) は頻 (しき) りに 海所 (海辺) にて言われる。尤も 験者 (けんざ) 有り。 駿 (駿州) は芙蓉 (富士山) 近くに 在り。山峰 (さんぽう) の 雲気 ...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(67)庁事

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庭のサルスベリ 白花が勢いを取り戻して 再び紅白競演 2026.9.22 台風25号は関東で、大分被害が出ているようだ。水害と土砂崩れ、繰り返しの災害に、大変な夏であった。 土曜日の金谷郷土史研の講義、どうにか纏まりそうだ。要は「逸脱」である。自分の得意分野へ話を導けば、何とかなりそうである。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 庁事 庁事自古率以辰入、以未退、余随要省事、以辰入、以午退、 然一事無闕漏、従吏得暇、皆大喜、欲令之就学也、 但退後民有告而出者、余与主簿、一人出庁事、不再労民也 (解読) 庁事 庁事 (ちょうじ) 、古 (いにし) えより、辰 (辰の刻) を以って入り、未 (未の刻) を以って 退 (ひ) くの 率 (りつ) 。 余 (よ) 、要 (必要) に随い事を省 (はぶ) く。辰を以って入り、 午 (午の刻) を以って退く。 然し、一事も 闕漏 (けつろう) 無く。 従吏 (じゅうり) 暇 (ひま) を得、皆な大喜び。 これ就学を せしむを欲す なり。但し、退 (ひ) き後、 民 (たみ) 告げて出る者有れば、 余 (よ) と 主簿 、一人出庁の事、再び労 (つと) める 民 (従吏) はなきなり。 (語注) ※ 庁事(ちょうじ)➔ 役所の仕事。 ※ 率(りつ)➔ さだめ。きまり。 ※ 闕漏(けつろう)➔ 必要な事物が欠け落ちていること。もれ。おち。 ※ 従吏(じゅうり)➔ 下役人。 ※ せしむを欲す ➔ ~ させたいと思う。 ※ 主簿(しゅぼ)➔ 帳簿をつかさどる人。 (続く)

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(66)坂井山崩

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台風25号は東へ反れて行き 上陸は免れたようだ  当地も大きな被害もなく過ぎた 2026.9.21 台風25号も過ぎた。心配していた、名古屋のアジア大会も予定通り進んでいるようだ。昔は災害は前触れなくやってきた。今日の 「 蕉園渉筆」のテーマの山崩れは何が原因だったのだろう。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 坂井山崩 癸未秋、大風雨坂井邑民夜半山崩、大石壊屋、土砂埋没、 梁木傾墜、傷脚、 驚醒匍匐潜梁隙赴母寝所、破屋抱出、 去出二子、妻乳初生児、圧於屋下、 不能救出、 急呼隣人、 鑿土砂二丈許、而及之、児死妻蘇、余以状聞于太公、 急馳伝有周急之恵、褒其先老母 (解読) 坂井山崩 癸 (みずのと) 未 (ひつじ) (文政6年、1823) 秋、大風雨、坂井邑 (むら) 民 (民家) 、 夜半 (やはん) 山崩れ、 大石、屋 (家屋) を壊す。土砂に埋没 (まいぼつ) 、 梁木 (りょうぼく) 傾き墜 (お) つ。 脚を傷め、驚き醒 (めざ) め、 匍匐 (ほふく) して 梁 (はり) の隙 (すき) を潜 (くぐ) り、母の寝所に赴 (おもむ) き、 破屋 (はおく) から 抱 (かか) え出る。二子は出で去り、妻と 乳初生児 (にゅうしょせいじ) 、 屋下 (おくか) に圧せられ、 救出能わず。急いで隣人を呼び、土砂を二丈許り 鑿 (うが) ち、而 (しか) してこれに及ぶ。 児 (ややこ) 死に、妻蘇 (よみが) える。 余 (よ) 、状 (書状) を以って太公に聞く。 急ぎ馳 (は) せ伝 (つた) え、 周急 (しゅうきゅう) の 恵み有り。それ、老母を先んずるを褒 (ほ) むる。 (語注) ※ 梁木(りょうぼく)➔ 棟とうちちがえに柱の上に渡して屋根を支える材木。 ※ 匍匐(ほふく)➔ 腹ばいになって、手と足ではうこと。 ※ 乳初生児(にゅうしょせいじ)➔ 生まれたばかりの乳児。新生児。 ※ 屋下(おくか)➔ 屋根の下。 ※ 周急(しゅうきゅう)➔ 危急を救うこと。 (続く)

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(65)甘蔗

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砂糖キビから砂糖を絞り出す(昔の沖縄の風景) 相良でも同様の風景があったのだろうか 2026.9.20 今月の山を越し、(すべての講座を終えた)今日は一日、半睡状態で過ごした。テレビは点いているが、ほとんど見てはいなかった。ただこんな風にだらだら過ごすのは今日だけにする。 土曜日は金谷郷土史研の講義を頼まれている。「竹下村誌稿」の「沿革」編について、二時間というが、何を話そうか。そもそも、 「竹下村誌稿」は郷土資料であって、 誌稿は、何も主張していない。だからなかなか扱いにくい材料である。 今週はこの課題を前に、苦労しそうである。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 甘蔗 官庭試甘蔗八九茎、其受風揺曳甚可愛、及十月嘱製造家、 為自糖、得二斤許、 余不培不養、不盈十茎而其利如斯、 宜哉民之利而作也、有一絶曰、 長葉柔茎舞戦風、 不培不養漸生叢、誰知如雪如霜物、出個青々翠々中 (解読) 甘蔗 官庭 (かんてい) 、 甘蔗 (かんしょ) 八、九茎 (くき) を試 (こころみ) る。 それ風を受け 揺曳 (ようえい) 、甚だ可愛 (かわ) い。 十月に及び、製造家に嘱 (たの) み、自 (みずか) ら糖と為す。 二斤 (にきん) 許りを得 る。 余 (よ) 、培 (つちか) わず養 わず。十茎に盈 (み) たずして、その利、斯 (か) くの如 し。 宜 (よろ) しきかな、民の利、而 (しこう) して作るなり。 一絶 (いちぜつ) 有り、曰く、   長葉柔茎舞戦風    長葉柔らかく、茎、戦 (そよ) ぐ風に舞う。   不培不養漸生叢    培 (つちか) わず養わず、漸 (だんだん) 生 (お) い叢 (しげ) る。   誰知如雪如霜物    誰が知る、雪の如き、霜の如き物、   出個青々翠々中    個 (その) 青々 (せいせい) 翠々 (すいすい) 中より出ずるを。 (語注) ※ 官庭(かんてい)➔ 役所の庭。 ※ 甘蔗(かんしょ)➔ さとうきび。 ※ 揺曳(ようえい)➔ ゆらゆらとゆれてなびくこと。 ※ 二斤(にきん)➔ 一二〇〇グラム。(一斤は六〇〇グラム) ※ 一絶(いちぜつ)➔ 一つの 絶句 。 ...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(64)紙鳶/川崎花山

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  相良凧 2026.9.19 午前、初心者、午後、経験者と、金谷宿大学「古文書に親しむ」2講座を実施した。この頃は、漸く気を楽に講座が進められる余裕が生まれたような気がする。 ただ、2講座の日は、疲れが倍に感じるのは歳のせいか。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 紙鳶 遠州弄紙鳶、始於十二月至五月六日而止、形与都下紙鳶殊矣、 図画分際尽裁去露骨、々如篭、飾以錦天鵝絨類、相良稍質、 掛川甚文、一紙鳶価用数金云 (解読) 紙鳶 遠州、紙鳶(しえん)を弄(もてあそ)ぶ。十二月に始め、五月六日に至り止む。 形、都下 紙鳶 (たこ) と殊 (こと) にする。図画 分際 (ぶんざい) を尽し、 裁去 (さいきょ) し、 骨を露 (あらわ) にする。骨、篭 (かご) のごとく、錦 (にしき) 、天鵝絨 (ビロード) 類を 以って飾り、 相良稍 (やや) 質 (しつ) 、掛川甚だ 文 (あや) 、一と紙鳶 (たこ) の価 (か) 、 数金 (両) を用うと云う。 (語注) ※ 紙鳶(しえん)➔ 凧(たこ)のこと。 ※  分際(ぶんざい)➔ それぞれに応じた程度。ほど。 ※ 裁去(さいきょ)➔ 裁ち切って除く。 ※ 質(しつ)➔ 飾り気がない。 ※ 文(あや)➔ いろどり。美しさ。見事さ。 (原文) 川崎花山 今茲乙酉二月川崎後山一民先花時栽桜三五種、 十数日之際不期而植者遠近数百人、 山之後背桜凡千七百株、 桃百余株、至三月尽華、余往観焉、自遠眺之成雲成霞、 稍上花益艶、香益喫(潔)、花間隔大海、豆之諸山青如染、 駿之富嶽雪嶺挺然于其巓与花相映発、又帆影隠見於林表、 奇不可言、実壮観也 (解読) 川崎花山 今茲 (ここ) 、乙酉 (きのととり) 二月 (文政8年、1825) 、川崎後山、一民 (民家) 先、花時、 桜三、五種栽 (う) え、 十数日の際 (あいだ) 、期せずして、植える者、遠近数百人。 山の 後背 (こうはい) 、桜凡 (およ) そ千七百株、 桃百余株。三月に至り尽 (ことごと) く 華 (はな) 。余、観 (み) に往く。遠くよりこれを眺むに 雲になり霞になり、 稍 (やや) 上の花、益 (...