投稿

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(36)平田寺木樨

イメージ
キンモクセイ(木樨) (ネットより拝借) 2026.8.19 午前中、散髪に行く。三日連休の後だという。休み中、二度ほど前を通ったが、休みだった。店主ももう81歳、今回から300円値上がりして、4300円となった。長く3900円が続いたが、ここへ来て、4000円、4300円と、立て続けに散髪料が上った。諸物価値上がりでやむを得ないところか。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文)   平田寺木樨 平田邑汲江山寺、有木樨朽腐者、周囲垣之、 開祖竜峯師時、日坂菊川辺有怪禽、 其羽如刃、 触者立死、三位某将弓手隊射殺之、泊駅数月、 三位密通其舎処女、 名菊者、去後生一児、 及長託竜峰、有悪星為鬼来欲奪、竜峰期以十歳、 鬼題児額以十字、及期而来、加一点十上曰、 嘗以千歳為期、何来之早、鬼屈将去、 作偈示之、 鬼不能和為転之木犀、樹々枯鬼去、至今植木犀不殖云、 是流俗所伝称、 不足信焉、現住曰、翠巌好吟詩、 頗有識見一日話及之晒而不応。 (解読) 平田寺木樨 (平田寺モクセイ) 平田邑 汲江山寺 (きゅうこうざんじ) 、木樨 (もくせい) 朽腐 (きゅうふ) のもの有り。 周囲この垣、 開祖龍峯師の時、日坂、菊川辺り 怪禽 (かいきん) 有り。 その羽 (はね) 刃 (やいば) の如く、 触れる者 立ち死ぬ 。三位 (さんみ) 某 (ぼう) 将、 弓手隊 (ゆみてたい) これを射殺す。駅 (宿) に泊まり数ヶ月、 三位、その舎 (宿) の処女と 密通す。名を菊という者、去りて後、一児生まれ、 長きに及び、龍峰に託す。 悪星 (あくせい) 有り、鬼来たり奪わんと欲す。 龍峰、十歳を以って期 (ご) し、 鬼、児の額に十字を題 (しる) す。 期及びて来たり、一点を十の上に加 え曰 (いわ) く、 「嘗 (かつ) て以って、千歳と 期 (ご) し たり。 何来之早 (なにくるのはやし) 。」 鬼屈して将 (まさ) に去らんとし、 偈 (げ) を作りこれを示す。 鬼和 (わ) し能 (あた) わず。 この 転 (うたて) のため、木犀 (もくせい) 、樹々枯れ、鬼去る。 今に至り、木犀を植え 殖 (そだ) たずと云う。これ 流...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(35)閑田院蘇鉄

イメージ
御前崎市 下朝比奈の 閑田院 今もソテツが残っているのであろうか   2026.8.18 土曜日の金谷郷土史研、「竹下村誌稿」講義を頼まれているが、何を話せばよいのか、未だ決めかねている。今、頭にあるのは、以下の三点くらいだが、どうしようか。  1  「竹下村誌稿」解読のいきさつ  2   五和村の開拓の話  3  「天正の瀬替え」はなかった話 こんなところだと思うが、どうであろう。あと三日で内容をきっめなければばらばい。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 閑田院蘇鉄 朝比奈邑、閑田院大鉄蕉、高不及能満之種、 大則倍之、幹立者臥者成勢如走者、蟠根虎踞、 竜躍鳳尾蓋之、不知其幾百茎也、此種蓋州第一、 人知有能満面不知有閑田也、樹亦有幸不幸哉 (解読) 閑田院蘇鉄 ( ソテツ) 朝比奈邑 (むら) 、閑田院 (かんでんいん) 大鉄蕉 (そてつ) 、高さ能満 (寺) の種におよばず。 大きさ則 (すなわ ) ち、これの倍。幹立つもの、臥 (ふ) すもの、勢い走るが如き なるもの、 蟠根 (ばんこん) 虎踞 (こきょ) 、 竜躍 (りゅうやく) 鳳尾 (ほうび) これを蓋 (おお) う。その幾百茎 (いくひゃくけい) を知らざるなり。 この種、蓋 (けだ) し州 (遠州) 第一。人、能満 (のうまん) 有るを知りて、 閑田 (かんでん) 有るを知らざるなり。 樹、また、幸不幸有るかな。 (語注) ※ 蟠根(ばんこん)➔ 曲がりくねった根。わだかまった根。 ※ 虎踞(こきょ)➔ 虎がうずくまる。 ※ 竜躍(りゅうやく)➔ 竜のように勢いよく躍動する。 ※ 鳳尾(ほうび)➔ 蘇鉄の葉。 ( 続く)

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(34)能満寺蘇鉄/能満寺

イメージ
  能満寺のソテツ(鉄蕉) 2026.8.17 今朝、元勤めていたK社のKK氏から電話があり、K社のセールスだったN氏が亡くなったと聞いた。享年81歳。往時同僚だった人たちが次々に亡くなってゆく。寂しい限りである。 同時に、K社の状況を聞いたところ、8月決算の今年度は、過去最高の売上高を記録し、利益も最大になるという。まずは素晴らしい話だが、近くのボイラー制作会社を買収する話も進んでいるという。ボイラーはプラントに必需だから、無くなっては困るからの買収だというが、余裕がなくては出来ない展開である。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 能満寺、蘇鉄 鉄蕉喜南国、故駿遠両州有大樹、吉田村能満寺以鉄蕉聞焉、 巡部之次往而観之、高二丈二尺余幹大一丈一尺余、 東西張枝周囲六七間、踰楣払屋瓦鳳尾下垂数十茎、 可称壮観矣、 住僧有雅韻、迎出唱一絶、乃作和、 又題鉄蕉而去 (解読) 能満寺、蘇鉄 鉄蕉 (てつしょう) 南国を喜ぶ。故に駿遠両州、大樹あり。吉田村能満寺、 鉄蕉 を以って聞こえる。 巡部 (じゅんぶ) の次 (つい) で、 往きてこれを観る。 高さ二丈二尺余、幹大きさ一丈一尺余、 東西張り枝、周囲六七間、 楣 (まぐさ) を踰 (こ) え、 屋瓦 (おくが) を払い、 鳳尾 (ほうび) 下垂 (しただ) れ 数十茎 (けい) 、 壮観と称すべき。住僧 雅韻 (がいん) 有り。迎え 一絶 (いちぜつ) を唱 (とな) う、 乃 (すなわ) ち和を作 (な) し、 また 鉄蕉 (てつしょう) と題して去る。 (語注) ※ 鉄蕉(てっしょう)➔ ソテツの別名。 ※ 巡部(じゅんぶ)➔ 巡撫。地方を巡回して、人民の心を安んじなだめること。 ※ 楣(まぐさ)➔ 窓や出入口の上に水平に渡した横木。 ※ 屋瓦(おくが)➔ 屋根がわら。 ※ 鳳尾(ほうび)➔ 植物「芭蕉」をたとえていう。ここでは蘇鉄の葉。 ※ 雅韻(がいん)➔ 風流な味わい。上品な風情。 ※ 一絶(いちぜつ)➔ 一つの絶句。一首の短歌の意にも用いる。 (原文) 能満寺 能満寺頗大刹、国初時住寺某、茶阿局兄弟、 故局死後其珍器皆此収焉、今不多存云、...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(33)南郭筆

イメージ
サルスベリとタカサゴユリの競演 どちらも暑さに強い花だ   2026.8.16 ロシアのプーチン大統領が初めて北方領土を視察したというニュースが入ってきた。成程、プーチンさん、追い詰められたら北方領土にでも避難のつもりなのだろうか。モスクワ辺りはいかにも危うい。北方領土ならばドローンは飛んでこれないだろうから、などと思いたくなる。とても、この時期、意味のある来訪だとは思えない。 久しぶりにゆっくりしたけれども、明日からはまた準備で忙しくなりそうである。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 南郭筆 見付駅、医人江塚玄泰家蔵南郭翁真蹟、仮覧之、 翁集四編所載、 題青楓亭詩并小序也、書甚有雅韻、 翁卒七十余年、隻字為珍、而未加裱褙、 題一語令之為巻軸、命以赤水玄珠、 翁家水詩中動用此典故也。 (解読) 南郭筆 見付 駅、医人江塚玄泰家蔵、 南郭 (なんかく) 翁 真蹟 (しんせき) 、これを 仮覧 (からん) す。 翁集四編所載 (しょさい) 、「青楓亭詩並び小序」と題するなり。 書、甚だ 雅韻 (がいん) 有り。 翁七十余年にして卒 (お) えり。 隻字 (せきじ) 珍しくして、而して未だ 裱褙 (ひょうはい) を加えず。 題一語、これを 巻軸として令 (れい) す。 赤水 玄珠 ( せきすい はるたか) を以って命ず。 翁家、水 (赤水) 詩中 動用 (どうよう) 、この 典 (てん) 故なり。 (語注) ※ 南郭(なんかく)➔ 服部南郭。江戸中期の儒学者・漢詩人。京都の人。名は元喬。古文辞派の代表詩人。荻生徂徠門下で、太宰春台と並び称される。 ※ 真蹟(しんせき)➔ その人が書いたものであると確実に認められる筆跡。真筆。 ※ 仮覧(からん)➔ ちょっと見すること。 ※ 雅韻(がいん)➔ 風流な味わい。上品な風情。雅趣。雅致。 ※ 隻字(せきじ)➔ 一つの文字。熟語などの一字。また、短い字句。一つの文句。 ※ 裱褙(ひょうはい)➔ 掛物の表装。表具。 ※ 赤水玄珠(せきすいはるたか)➔ 長久保赤水のことか。江戸時代中期の地理学者、儒学者。 ※ 動用(どうよう)➔ 使用。流用。 ※ 典(てん)➔...

金谷宿大学「古文書に親しむ」(経験者)講座で

イメージ
      市野町 ↓    ↑安間町 浜松市の現代の地図   2026.8.15 朝から金谷宿大学「古文書に親しむ」初心者及び経験者講座を実施した。午前中に2時間、午後に2時間、4時間の講師はさすがに疲れた。 午後、経験者の講座で、解読の中に、「天龍川大水」と題した中に、大水の被害にあったのは、天龍 「川より西斗りにて、壱野地安満、別段の荒れと申し候」 とあって、この「 壱野地安満 」が意味不明で解読できなかった。 受講者のS氏が浜松に「いちの」という地名があると、スマホで調べてくれた。自宅に帰って現在の地図を確かめると、浜松市の天竜川寄りに、「市野町」と「安間町」という現在の町名を見つけた。これかと思い、昔の村名を確かめると、長上郡に 「市野村」と「安間村」という村名を見つけた。二つの村は3キロほどしか離れていない。そこで文書の文言にもどると、    天竜川より西ばかりにて、市野(村)地、安間(村)、別段の荒れと申し候。 と読める。納得である。次回、補足して、訂正しようと思う。 講座のあと、公民館の金谷宿大学担当のT氏と雑談した。 今日は2講座実施して疲れたと話したところ、1講座2時間は長いから、せめて1時間半に短縮したらどうだと提案された。他の似た講座は1時間半で実施していると聞く。2時間に慣れているので、短縮は中々しがたい。まあ、やれるところまでやってみるしかないと思った。 自宅に帰って、1時間ほど昼寝したら、元気が出て来た。

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(32)徂徠筆

イメージ
植えてもいないタカサゴユリが 猛暑のわが家の庭に花を咲かせる こんな暑いときに御苦労なこった 最も彼らは台湾産だから 暑さには慣れているのか   2026.8.14 一日、明日の二講座の準備で費やす。やや疲労感あり。夜まで掛かり何とか終えた。 「蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 徂徠筆 河東邑民蔵物子一軸、筆李済南開簾署有青山色、 対酒人如白雪枝一聯、筆力遒健、蓋真蹟也、 印陰陽識二、以其所不多覩人々容疑、 余熟視之陰為禄隠、陽為茂卿、是五六十時、所筆、 按集中、有物子称禄隠七言律、意此間所刻用、 固題数語還之、以証後人 (解読) 徂徠筆 河東邑 (むら) 民蔵、 物子 (ぶつし) 一軸。李済南筆をとり、 簾署 (れんしょ) を開く。 青山 (せいざん) 色あり。 酒人 (酒客) に、白雪の如き枝一聯 (れん) 。 筆力 遒健 (しゅうけん) 、蓋 (けだ) し 真蹟 (しんせき) なり。 印、陰陽二つ識 (しる) す。 その所を以って、覩 (み) る人々、疑いを容れること多 (おお) からず。 余、これを熟視 (じゅくし) 、陰、 禄隠 (ろくいん) たり。陽、茂卿 (徂徠) たり。 これ五、六十 (歳) 時、筆する所、 集中 (しゅうちゅう) を按ずるに、 物子、禄隠と称する 七言律 (しちごんりつ) あり。 この間に刻し用いたところの意、 固 (もと) より題して数語を還 (かえ) し 、 以って後の人に証 (しる) す。 (語注) ※ 荻生徂徠(おぎゅうそらい)➔ 江戸中期の儒学者。江戸の人。名は双松。字は茂卿。別号、蘐園。また、物部氏の出であることから、中国風に物徂徠と自称。 ※ 物子(ぶつし)➔ 物徂徠(荻生徂徠)のこと。 ※ 簾署(れんしょ)➔ 書房のすだれ。 ※ 青山(せいざん)➔ 樹木が青々と茂っている山。 ※ 遒健(しゅうけん)➔ 力強い筆致を指す。 ※ 真蹟(しんせき)➔ その人が書いたものであると確実に認められる筆跡。真筆。 ※ 禄隠(ろくいん)➔ 朝廷に仕えながら、市隠のようにくらす。 ※ 集中(しゅうちゅう)➔ 作品集や文集の中。 ※ 七言律(しちごんりつ)➔ 七...

掛川古文書講座にて、質問される

イメージ
  「為證據之相渡申 候、 扱い證文之叓」 「取扱」と読むには無理がある   2026.8.13 午後、掛川古文書講座に出席する。前回、「江戸時代の庶民の生活はどんな風だったのだろう」との、斜め前の受講者に聞かれて、次回、資料を提供すると約束した。今日、「上越秋山紀行」の解読版を提供して、庶民でも最も厳しい生活をしていたと思われる。上越の秋山郷という山間地の村々を、鈴木牧之が旅した記録だと説明したが、どこまで理解してくれたであろうか。読んでくれれば、山里の暮らしぶりが理解してもらえると思う。 講師の北原氏が、 20年に及ぶ講座で扱ってきた古文書とその解読を選別して、図書館で本のしてくれるというので、その古文書を見直しながら選別作業をすると、前回話された。今日は見直しの第一回として、御林の雑木を無断で切り払い、燃やして灰を取り、その灰を商売した という事件の古文書が再読された。 中で「被仰上 候所」を正しくは「 奉仰上 候 」だと説明があった。「仰せ上げ奉り候」という言い回しは聞いたことがない。原文の文字が「被」ではなくて「奉」に見えるというだけで、そんな言い回しにすべきなのだろうか。疑問に思っていると、案の定、元のままでよいのではないかと意見が出た。自分も賛同した。どうやら講師の考え過ぎであったようだ。 これ以外にも、今日のテーマの中で、表題の「為證據之相渡申 候 、 扱い證文之叓」について、講師は「為證據之相渡申、 取 扱い證文之叓 」と「候」を「取」と読んだものを、文字は「候」で「取」と読むのは無理があるなど、二三、異見を述べていた。 そんなためか、帰りに受講者の一人に声を掛けられて、「 被仰上 候所 」とはどういう意味か、「被仰下候所」ならわかるがと聞かれた。突然の質問に答えように困ったが、これは出張った役人が奉行や上役に報告したことを言う、決まり文句で、村役人から報告する場合の形式にのっとったもので、こういう形式は役人の方から聞いて、代々庄屋などが引き継いでいる書式だと、返事になったかどうか、答えた。まだ古文書を始めて間がない方だったのだろうか。分かってくれたかどうかは不明である。 しかし、自分はこの講座の受講者で、先生ではないのだから、講師に聞いてくれと言いたいところだが、今後も聞かれたら、わかる範囲で答えるのであろう。