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「蕉園渉筆」(漢文)を読む(33)南郭筆

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サルスベリとタカサゴユリの競演 どちらも暑さに強い花だ   2026.8.16 ロシアのプーチン大統領が初めて北方領土を視察したというニュースが入ってきた。成程、プーチンさん、追い詰められたら北方領土にでも避難のつもりなのだろうか。モスクワ辺りはいかにも危うい。北方領土ならばドローンは飛んでこれないだろうから、などと思いたくなる。とても、この時期、意味のある来訪だとは思えない。 久しぶりにゆっくりしたけれども、明日からはまた準備で忙しくなりそうである。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 南郭筆 見付駅、医人江塚玄泰家蔵南郭翁真蹟、仮覧之、 翁集四編所載、 題青楓亭詩并小序也、書甚有雅韻、 翁卒七十余年、隻字為珍、而未加裱褙、 題一語令之為巻軸、命以赤水玄珠、 翁家水詩中動用此典故也。 (解読) 南郭筆 見付 駅、医人江塚玄泰家蔵、 南郭 (なんかく) 翁 真蹟 (しんせき) 、これを 仮覧 (からん) す。 翁集四編所載 (しょさい) 、「青楓亭詩並び小序」と題するなり。 書、甚だ 雅韻 (がいん) 有り。 翁七十余年にして卒 (お) えり。 隻字 (せきじ) 珍しくして、而して未だ 裱褙 (ひょうはい) を加えず。 題一語、これを 巻軸として令 (れい) す。 赤水 玄珠 ( せきすい はるたか) を以って命ず。 翁家、水 (赤水) 詩中 動用 (どうよう) 、この 典 (てん) 故なり。 (語注) ※ 南郭(なんかく)➔ 服部南郭。江戸中期の儒学者・漢詩人。京都の人。名は元喬。古文辞派の代表詩人。荻生徂徠門下で、太宰春台と並び称される。 ※ 真蹟(しんせき)➔ その人が書いたものであると確実に認められる筆跡。真筆。 ※ 仮覧(からん)➔ ちょっと見すること。 ※ 雅韻(がいん)➔ 風流な味わい。上品な風情。雅趣。雅致。 ※ 隻字(せきじ)➔ 一つの文字。熟語などの一字。また、短い字句。一つの文句。 ※ 裱褙(ひょうはい)➔ 掛物の表装。表具。 ※ 赤水玄珠(せきすいはるたか)➔ 長久保赤水のことか。江戸時代中期の地理学者、儒学者。 ※ 動用(どうよう)➔ 使用。流用。 ※ 典(てん)➔...

金谷宿大学「古文書に親しむ」(経験者)講座で

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      市野町 ↓    ↑安間町 浜松市の現代の地図   2026.8.15 朝から金谷宿大学「古文書に親しむ」初心者及び経験者講座を実施した。午前中に2時間、午後に2時間、4時間の講師はさすがに疲れた。 午後、経験者の講座で、解読の中に、「天龍川大水」と題した中に、大水の被害にあったのは、天龍 「川より西斗りにて、壱野地安満、別段の荒れと申し候」 とあって、この「 壱野地安満 」が意味不明で解読できなかった。 受講者のS氏が浜松に「いちの」という地名があると、スマホで調べてくれた。自宅に帰って現在の地図を確かめると、浜松市の天竜川寄りに、「市野町」と「安間町」という現在の町名を見つけた。これかと思い、昔の村名を確かめると、長上郡に 「市野村」と「安間村」という村名を見つけた。二つの村は3キロほどしか離れていない。そこで文書の文言にもどると、    天竜川より西ばかりにて、市野(村)地、安間(村)、別段の荒れと申し候。 と読める。納得である。次回、補足して、訂正しようと思う。 講座のあと、公民館の金谷宿大学担当のT氏と雑談した。 今日は2講座実施して疲れたと話したところ、1講座2時間は長いから、せめて1時間半に短縮したらどうだと提案された。他の似た講座は1時間半で実施していると聞く。2時間に慣れているので、短縮は中々しがたい。まあ、やれるところまでやってみるしかないと思った。 自宅に帰って、1時間ほど昼寝したら、元気が出て来た。

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(32)徂徠筆

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植えてもいないタカサゴユリが 猛暑のわが家の庭に花を咲かせる こんな暑いときに御苦労なこった 最も彼らは台湾産だから 暑さには慣れているのか   2026.8.14 一日、明日の二講座の準備で費やす。やや疲労感あり。夜まで掛かり何とか終えた。 「蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 徂徠筆 河東邑民蔵物子一軸、筆李済南開簾署有青山色、 対酒人如白雪枝一聯、筆力遒健、蓋真蹟也、 印陰陽識二、以其所不多覩人々容疑、 余熟視之陰為禄隠、陽為茂卿、是五六十時、所筆、 按集中、有物子称禄隠七言律、意此間所刻用、 固題数語還之、以証後人 (解読) 徂徠筆 河東邑 (むら) 民蔵、 物子 (ぶつし) 一軸。李済南筆をとり、 簾署 (れんしょ) を開く。 青山 (せいざん) 色あり。 酒人 (酒客) に、白雪の如き枝一聯 (れん) 。 筆力 遒健 (しゅうけん) 、蓋 (けだ) し 真蹟 (しんせき) なり。 印、陰陽二つ識 (しる) す。 その所を以って、覩 (み) る人々、疑いを容れること多 (おお) からず。 余、これを熟視 (じゅくし) 、陰、 禄隠 (ろくいん) たり。陽、茂卿 (徂徠) たり。 これ五、六十 (歳) 時、筆する所、 集中 (しゅうちゅう) を按ずるに、 物子、禄隠と称する 七言律 (しちごんりつ) あり。 この間に刻し用いたところの意、 固 (もと) より題して数語を還 (かえ) し 、 以って後の人に証 (しる) す。 (語注) ※ 荻生徂徠(おぎゅうそらい)➔ 江戸中期の儒学者。江戸の人。名は双松。字は茂卿。別号、蘐園。また、物部氏の出であることから、中国風に物徂徠と自称。 ※ 物子(ぶつし)➔ 物徂徠(荻生徂徠)のこと。 ※ 簾署(れんしょ)➔ 書房のすだれ。 ※ 青山(せいざん)➔ 樹木が青々と茂っている山。 ※ 遒健(しゅうけん)➔ 力強い筆致を指す。 ※ 真蹟(しんせき)➔ その人が書いたものであると確実に認められる筆跡。真筆。 ※ 禄隠(ろくいん)➔ 朝廷に仕えながら、市隠のようにくらす。 ※ 集中(しゅうちゅう)➔ 作品集や文集の中。 ※ 七言律(しちごんりつ)➔ 七...

掛川古文書講座にて、質問される

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  「為證據之相渡申 候、 扱い證文之叓」 「取扱」と読むには無理がある   2026.8.13 午後、掛川古文書講座に出席する。前回、「江戸時代の庶民の生活はどんな風だったのだろう」との、斜め前の受講者に聞かれて、次回、資料を提供すると約束した。今日、「上越秋山紀行」の解読版を提供して、庶民でも最も厳しい生活をしていたと思われる。上越の秋山郷という山間地の村々を、鈴木牧之が旅した記録だと説明したが、どこまで理解してくれたであろうか。読んでくれれば、山里の暮らしぶりが理解してもらえると思う。 講師の北原氏が、 20年に及ぶ講座で扱ってきた古文書とその解読を選別して、図書館で本のしてくれるというので、その古文書を見直しながら選別作業をすると、前回話された。今日は見直しの第一回として、御林の雑木を無断で切り払い、燃やして灰を取り、その灰を商売した という事件の古文書が再読された。 中で「被仰上 候所」を正しくは「 奉仰上 候 」だと説明があった。「仰せ上げ奉り候」という言い回しは聞いたことがない。原文の文字が「被」ではなくて「奉」に見えるというだけで、そんな言い回しにすべきなのだろうか。疑問に思っていると、案の定、元のままでよいのではないかと意見が出た。自分も賛同した。どうやら講師の考え過ぎであったようだ。 これ以外にも、今日のテーマの中で、表題の「為證據之相渡申 候 、 扱い證文之叓」について、講師は「為證據之相渡申、 取 扱い證文之叓 」と「候」を「取」と読んだものを、文字は「候」で「取」と読むのは無理があるなど、二三、異見を述べていた。 そんなためか、帰りに受講者の一人に声を掛けられて、「 被仰上 候所 」とはどういう意味か、「被仰下候所」ならわかるがと聞かれた。突然の質問に答えように困ったが、これは出張った役人が奉行や上役に報告したことを言う、決まり文句で、村役人から報告する場合の形式にのっとったもので、こういう形式は役人の方から聞いて、代々庄屋などが引き継いでいる書式だと、返事になったかどうか、答えた。まだ古文書を始めて間がない方だったのだろうか。分かってくれたかどうかは不明である。 しかし、自分はこの講座の受講者で、先生ではないのだから、講師に聞いてくれと言いたいところだが、今後も聞かれたら、わかる範囲で答えるのであろう。

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(31)〇〇村 領右衛門/不知字

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傘寿お祝いのケーキ   2026.8.12 午後、まきのはら塾、「古文書解読を楽しむ」講座。今日も楽しく実施できた。 名古屋のまーくん母子は、午後名古屋へ帰った。 「蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) □ □村 領右衛門 金谷民家婢一朝出汲、数十蛙死井中、入報主人乃令人浚井、 入而輙死、又入将出救、相尋而没、不知漑酢持炬等術可歎也 (解読) □ (虫損) □村 領右衛門 金谷、民家の婢 (はしため) 一人、朝水汲みに出る。数十蛙 (かえる) 井の中で死す。 入報 (にゅうほう) 、主人、乃 (すなわ) ち人に井戸を浚 (さら) わせる。 (井戸に) 入りて輙 (すなわ) ち死す。 また入り、将 (まさ) に救い出さんとす。 相尋ねて没す。酢を漑 (そそ) ぎ、炬 (たいまつ) を持つ等の術 (てだて) 、 知らざるを歎くべきなり。 (語注) ※ 入報(にゅうほう)➔ 報告を入れること。 (原文) 不知字 三又村民家子出在東都、寄書曰、天行病人多死、幸而 免矣、其父不識一丁、 読死一字、痛哭延僧、誦経、 一村来弔、数月子帰自東都 (解読) 不知字 (字を知らず) 三又村民家、子出で東都 (とうと) に在り。書を寄せて曰く、天行 (てんこう) 病人 多く死す。幸いにして 免 (まぬが) る。その父、一丁 (いっちょう) 識らず、 死一字を読む。痛哭 (つうこく) 、僧を延 (まね) き誦経 (ずきょう) す。 一村、弔 (とむら) いに来る。数月して、子、東都より帰る。 (語注) ※ 東都(とうと)➔ 東方のみやこ。日本では、京都に対して江戸または東京をいう。 ※ 天行(てんこう)➔ 時節によって流行する病気。はやりやまい。 ※ 一丁(いっちょう)➔ 書物の裏表二ページ。(文字を知らず、本も読めないことを云った) ※ 痛哭(つうこく)➔ 激しく泣き叫ぶこと。ひどく嘆き悲しむこと。 ※ 誦経(ずきょう)➔ 声を出して経をとなえること。 ( 続く)

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(30)秋葉火祭

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傘寿のお祝い 子供たち持参の御馳走   2026.8.11 午後、駿河古文書会の基礎講座の講師で、静岡へ行く。少し早く始め、時間があったので、この「かさぶた残日録」及び「蕉園渉筆」のことを宣伝した。同ブログのカウント数が増えれば良いが。 夜、子供たちと孫たちが集まって、傘寿のお祝いをしてくれた。さあ、次は米寿だ。そこまではまたひと山ある。 「蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 秋葉火祭 秋葉山、歳十一月十六日、為火舞、数人持炬而舞、 祠側、有一叢、老杉列立、環牆禁人、此日守司者入而祈焉、 奠膳七十五、毎膳撃鼓、天狗奪桴、固数十挟腰而入、 寛政の京師火、秋葉神第一護禁中、有 勅祈年宮、 爾後不奪桴云 (解読) 秋葉火祭 秋葉山、歳 (とし) 十一月十六日、火舞 (ひまい) として、数人、 炬 (きょ) を持ちて舞う。 祠 (ほこら) 側 (そば) に 一叢 (ひとむら) 有り。老杉 (ろうさん) 立ち列 (つら) なり、 環牆 (かんしょう) 人を禁ず。 この日、 守司 (しゅし) の者、入りて祈る。 奠膳 (でんぜん) 七十五、毎膳、鼓 (こ) を撃 (う) つ。 天狗、桴 (ばち) を奪う。 固 (もと) より数十、腰に挟 (はさ) みて入る。寛政 (かんせい) の 京師火 (けいしび) 、 秋葉神、第一、禁中を護る。祈年 (きねん) 宮に 勅 (ちょく) あり。爾後 (じ ご) 、 桴 (ばち) を奪わずと云う。 (語注) ※ 炬(きょ)➔ たいまつ。かがり火。 ※ 一叢(ひとむら)➔ 一か所に集まりまとまっているもの。ひとかたまり。ここでは植生をいう。 ※ 環牆(かんしょう) ➔ 周りを取り巻く垣根。 ※ 守司(しゅし)➔ 役所。守る役職。 ※ 奠膳(てんぜん)➔ 神仏に供えるための食事を指す。 ※ 京師火(けいしび)➔ 京都で発生した火災や災害。 ※ 祈年(きねん)➔ その年の豊作を神に祈ること。 ※ 勅(ちょく)➔ 天皇の言葉。みことのり。 ( 続く)

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(29)咸陽瓦硯

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瓦硯(かわらすずり) (ネットから写真借用)   2026.8.10 明日の駿河古文書会基礎講座、明後日の牧之原塾、木曜日の掛川古文書講座まで、準備を終えた。夜になって、名古屋のかなくん母子が来る。明日、自分の傘寿の祝を夕方からやってくれるという。 「蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 咸陽瓦硯 相良板俊卿家、秘蔵咸陽瓦硯、父祖伝来云、色紫黒堅如石、 長六寸余、広居参分長之二、厚称之、併匣は華人所製、 余未一見咸陽瓦、則不知其贋如何俊卿索拙作不已、 賦七古一章畀之 (解読) 咸陽瓦硯 相良、板俊卿家、秘蔵の 咸陽 (かんよう) 瓦硯 (かわらすずり) 、父祖 (ふそ) 伝来と云う。 色は 紫黒 (しこく) 、堅さ石の如し。長さ六寸余り、広居 (はば) は 参分 長の二 、 厚さはこれを称 (たた) える。併 (しか) し、匣 (はこ) は 華人 (かじん) 製 (つく) る所。 余、未だ咸陽瓦 (かんようがわら) を一見 (いっけん) せず。 則 (すなわち) 、その贋 (にせもの) を知らず。 如何 (いか) に、俊卿、 拙作 (せっさく) を索 (もと) めたのみならず、 七古 (しちこ) 一章 (いっしょう) を賦 (ふ) し、これに畀 (あた) えたかをも知らず。 (語注) ※ 咸陽(かんよう)➔ 中国陝西省、渭水北岸にある工業都市。紡績工業が盛ん。秦代の首都。 ※ 瓦硯(かわらすずり)➔ 石の硯が主になるまで多く使用された陶製の硯。 ※ 紫黒(しこく)➔ 紫がかった黒色。 ※ 参分長の二(さんぶんちょうのに)➔ 長さの三分の二。 ※ 華人(かじん)➔ 当時の華人(中国人)つまり清国人のことであろう。 ※ 拙作(せっさく)➔ へたな作品。 ※ 七古(しちこ)➔ 「七言古詩」の略。漢詩体の一つ。一句が七言からなる古体詩。 ※ 一章(いっしょう)➔ 一つの文章。一編の詩。 ( 続く)