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「蕉園渉筆」(漢文)を読む(42)天狗火/梅干

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昨日、駿河古文書会基礎講座会場シズウェル7階より   2026.8.26 朝から二度寝、昼寝と久しぶりにのんびりと過ごした。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 天狗火 秋葉廟令、夜帰無燭、謂説者云、不有天狗火者乎、 忽然空中懸火如白昼 (解読) 天狗火 秋葉山の管理人、夜帰るに燭 (あかり) 無し。 説者 (せつしゃ) 謂 (いわ) れを云う。 天狗火 (てんぐび) 、有らざる者か。 忽然 (こつぜん) 、空中に火懸 (か) かり白昼の如し。 (語注) ※ 説者(せつしゃ)➔ 説を立てる人。また、説を述べる人。 ※ 天狗火(てんぐび)➔ 日本各地に伝承のある怪現象。怪火の一種で、主に水辺に現れるとされる。 ※ 忽然(こつぜん)➔ にわかに。突然。 (原文) 梅干 遠州梅実萃於相良、為塩以送運于江都、 其製暑月日中、地上布席、 展曝塩梅、放受夜気、 数日紅色自発、一歳凡千金、用紫蘇者、減価云 (解読) 梅干 遠州梅の実、相良に萃 (あつ) まる。塩のため、以って、江戸に送運す。 その製、 暑月 (しょげつ) 日中、地上へ席 (むしろ) を布 (し) き、 塩梅を展 (ひろ) げ曝 (さら) し、 放 (ほう) り 、夜気を受け、 数日紅色に 自発 (じはつ) す。 一歳 (年) 凡そ 千金 (せんきん) 。 紫蘇 (しそ) を用いるもの、価 (価値) を減らすと云う。 (語注) ※ 暑月(しょげつ)➔ 暑い季節。夏。 ※ 放る(ほおる)➔ 思うままにする。ほうっておく。 ※ 自発(じはつ)➔ 外からの刺激なしに、ひとりでに起こること。 ※ 千金(せんきん)➔ 千両。   ( 続く)

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(41)海嘯

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海嘯( 潮津波 )   2026.8.25 午後、先々週に続いて、駿河古文書会の基礎講座の講師をした。何とか、古文書解読講座を楽しんで貰いたいと、色々やってみたが、どうだったのだろう。基礎講座の30人程の受講者は、ベテランの方が多いので、少しやりにくい。細かい説明をすれば、そんなことは解っていると云われかねないと思うからである。 ともかく、今月の予定はすべて終わった。残りの何日かは、少し楽が出来るだろうか。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 卜風雨 相良船夫預卜風雨晦明及波高低、勝於他州船脚、 所必不爽、七年前善太者、艤将発曰、豆相之間必有海嘯、 人皆曰、海気平穏如何有海嘯也、後数日聞之、 豆之下田海嘯覆家傷人果同時也、善太稠中尤傑者云 (解読) 卜風雨 (風雨を卜 (うらな) う) 相良 船夫 ( せんぷ) 、風雨、 晦明 (かいめい) 及び波の高低を卜 (うらない) に預ける。 他州、 船脚 (ふなあし) において勝れ、必ずしも爽 (さわ) やかならざる所、 七年前、善太という者、 艤将 (ぎしょう) に発して曰く、 「 豆相 (ずそう) の間、必ず 海嘯 (かいしょう) 有り。」 人、皆な曰く、 「 海気 (かいき) 平穏、如何 (いか) に 海嘯 (かいしょう) あらんなり。」 数日後にこれを聞く。 豆 (伊豆) の下田、 海嘯 (かいしょう) 家を覆 (かえ) し、 人を傷つけ、同時に 果てるなり。 善太、 稠中 (ちゅうちゅう) もっとも 傑者 (けっしゃ) と云う。 (語注) ※ 船夫(せんぷ)➔ ふなのり。船頭。 ※ 晦明(かいめい)➔   暗さと明るさ。夜と昼。 ※ 船脚(ふなあし)➔ 船の進む速さ。船の速度。 ※ 艤将(ぎしょう)➔ 出航準備の船長。 ※ 豆相(ずそう)➔ 伊豆と相模。 ※ 海嘯(かいしょう)➔ 満潮の際、河口に入る潮波の前面が垂直の高い壁状になり、 砕けながら川上に進む現象。潮津波。 ※ 海気(かいき)➔ 海辺の空気。海のけはい。 ※ 稠中(ちゅうちゅう)➔ 沢山の人々の中。 ※ 傑者(けっしゃ)➔ ひときわ優れた者。 ( 続く)  ...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(40)田沼

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牧之原史料館前、田沼意次像   2026.8.24 明日の駿河古文書会基礎講座の準備を終えた。今月は中々忙しく、自分の古文書講座3講座に加えて、 駿河古文書会基礎講座2講座、金谷郷土史研の「竹下村誌稿」の講義一件と都合6件の講義があった。それも明日で最後となる。一ヶ月、6講座はいささか草臥れる。次の山は来年の3月になる。3月は全部で7講座が予定されている。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 田沼 癸未歳(文政六年也。此年四月蕉園赴任) 以封内一万石之地、換賜於摂州、所収三十邑、 賜諸参政田沼侯、以其旧封也、民慕 太公之仁、 愁訴数回、余以聞于 太公、公憐其為小侯之民、 然 台命不可回也、固其嘗所仮二千余金、折券賜之、 余又以聞曰、封内聞之欲為其民也、 公允余言速下 命、 合五千余金、同日折券、可謂賢明至仁之君矣 (解読) 田沼 癸未 (みずのとひつじ) 歳 ( 年) (文政六年なり。この年四月、蕉園赴任 (ふにん) ) 封内 (ほうない) 一万石の地を以って、摂州と換え賜 (たま) う。 三十邑 (村) の 所収 (しょし ゅう) 、参政田沼侯、諸 (もろもろ) 賜 (たま) わる。 その旧封を以ってなり。 民  太公 (たいこう) の 仁 (じん) を慕 (した) い、 愁訴 (しゅうそ) 数回、余以って、 太公に聞く。 公、小侯の民たるを憐 (あわれ) む。 然し、  台命 (たいめい) 回 (かえ) すべからざるなり。 これを賜 (たまわ) る。 固 (もと) より、 その嘗 (かつ) て 所 収 二千余金 折 券 (せつけん) 、 余また聞いて曰く、 封内 (ほうない) これを聞き、その民たるを欲するなり。  公、余の言を允 (ゆる) し、 速下 (即下) 、 合わせて五千余金を命じる。 同日 折券 (せつけん) 、賢明と謂 (い) うべし。仁の君に至る。 (語注) ※ 封内(ほうない)➔ 領内。 ※ 所収(しょしゅう)➔ ここでは、「年貢」のこと。 ※ 太公(たいこう)➔ 高齢の人をうやまっていう語。一橋治済のことか。 ※ 仁(じん)➔ 愛情を他に及ぼすこと。いつくしみ。なさけ。思いやり...

大代の河村氏を訪問する

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頂いた河村氏の著書と論文掲載雑誌   2026.8.23 昨日の 金谷郷土史研「竹下村誌稿」講座の第三回目に出席された大代の旧家、河村氏から頼まれた、某家の家歴を記した書のコピーを取って、忘れないうちにと、河村氏の御宅へ届けた。 河村宅の応接に招じられて、色々な話をした。今までも河村旧家を見学したり、接触する機会はあったのだが、チャンスを作り得なかったけれども、この田舎では珍しい知識人だと思っていた。 もともと化学系の大学を出て、会社勤めの後、 帰郷して 旧家を継がれ、その後は、塾の講師や、高校の講師などを勤めらる 傍ら、御林守を勤められたご先祖とその旧宅を守りながら、その功績を後世に伝える仕事をされていた。更に明治になってからのご先祖は、当地の茶業の振興に力を入れられた、そんな歴史を解明するべく活動されていると聞いた。 自分も、会社を終えてから、この20年の活動を、色々と話した。会社を終える時、これからは会社の仕事とは全く違う世界で生きて行くとの覚悟で、その後会社へ行ったり連絡したりことは全くない。会社を終えてからは、初め歩く事を趣味として、その終わりには四国歩き遍路に二度も行ったなどと話し、今はもっぱら古文書解読に時間を費やしていると、実際の講座の実施と解読作業の話などで話が弾んだ。 河村氏は若いときに小説家になろうと、書き記したものがあって、現在それを完成すべく、進めているとも聞いた。自分も今から60年前にいくつか小説を書いたことがあり、一号で終わったが、ガリ版刷りの同人誌も作ったことがあるなどとも話した。 終わりに河村氏から言われたことは、ここに住んで、今日のようなお話をしたことは初めてで、大変楽しかったと聞いた。こちらも同感で、出来ればこれからもこんな機会が作れればと思った。 河村氏は自分よりも5歳若い。こんな年になっても、新しく友人付き会いが始められれば、望外の喜びである。 桑原黙斎の「大井川源記」の解読版があるので、それを進呈すると約束したので、また日を改めて、届けようかと思っている。

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(39)蝒虫/慈菰

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  慈姑(くわい) 「形 ■ 子の如き」( ■ には という字が書かれている) 果たして何という字なのだろう。何と読むのだろう。 この形は「杓子」か「おたまじゃくし」か?  2026.8.22 午後、金谷郷土史研の「竹下村誌稿」講座の第三回目で、自分に番が回って来て、2時間の講座を実施した。課題は「用水、大井川、大代川」。古文書解読の講座と違い、歴史の講座は何をしゃべってよいのやら、ほとんど即興で、主に、「天正の瀬替え」についての持論をしゃべっていた。これで良かったのかどうか。自分に歴史の話は荷が重い。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文) 蝒虫 遠州患蝒虫、波津相良最多矣、觸書画器物、 食物亦貧家人憎之日撲殺不尽、 大比都下種可 二三倍、称曰大坂虫、近時大坂賈船漂白于灘中、 此蕃殖竟及闔州云、(追筆)相良民救之船中、大群付行李至宿舎 (解読) 蝒虫 (むかで) 遠州 蝒虫 (えむし) に患 (くる) しむ。波津、相良最も多し。書画、器物、食物に触れ、 また貧家人これを憎 (にく) み、日に 撲殺 (ぼくさつ) 、尽きぬ。都下に比べ大きな種、 二三倍あるべし、称して「大坂虫」と曰う。近時、大坂 賈船 (こせん) 、 灘中に漂泊、この 蕃殖 (はんしょく) 竟 (つい) に及 闔州 (こうしゅう) に及ぶと云う。 (追筆)相良民、救 (すく) いの船中、大群 行李 (こうり) に付け、宿舎に至る。 (語注) ※ 蝒虫(えむし)➔ ムカデ。(「撲殺」とあるため。相良町史の「蛔虫(かいちゅう)」ではない。) ※ 撲殺(ぼくさつ)➔ 殴り殺すこと。 ※ 賈船(こせん)➔ 商売のために用いる船。商船。 ※ 蕃殖(はんしょく)➔ 繁殖。動物や植物が生まれてふえること。 ※ 闔州(こうしゅう)➔ くに(遠州)じゅう。 ※ 行李(こうり)➔ 竹や柳で編んだ箱形の物入れ。旅行の際に荷物を運搬するのに用いた。 (原文) 慈菰 慈菰遠州所産長而小、形如  子、味不佳、 大与都下鬻者矣 (解読) 慈菰 (慈姑/くわい) 慈菰 (くわい) 、遠州所産、長くて小さい。形 □ 子 (読めず) の如きで、 味佳 (よ) からず。 ...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(38)鼓子花/桜

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ヒルガオ(鼓子花 ) 2026.8.21 午後、静岡の駿河古文書会に出席した。来週火曜日、今日の課題を基礎講座で担当するために、今日は細かい点まで解明して置かなければならないと思い、色々意見やら質問を一人で出していたような気がする。それでいくつも細かいことまで確認出来て良かった。講座後、今日の担当のHさんから、色々意見をいただいてよかったと御礼を云われた。意見がないと、講座内容が相手に伝わっているのかどうか、不安になってしまう。まあ、少々煩がられても、意見や質問はいっぱい出していこうと改めて思った。 さて、今日も「 蕉園渉筆」解読の続きを載せよう。 *********************************************************************** (原文) 鼓子花 都下所在鼓子花、花葉共似牽牛、遠州海上磧砂中多生、 花似牽牛而葉類蜀葵、間之即鼓子花也 (解読) 鼓子花 (ひるがお) 都下 、鼓子花 (ひるがお) 所在する所、花葉とも牽牛 (あさがお) に似る。 遠州海上 磧砂 (せきさ) 中、多く生ず。 花は牽牛 (あさがお) に似て、 葉は 蜀葵 (からあおい) に類し、この間、即 (すなわ) ち鼓子花 (ひるがお) なり。 (語注) ※ 都下(とか )➔ 江戸表 ※ 磧砂(せきさ)➔ 「砂磧」に同じ。砂の河原。砂原。 ※ 蜀葵(からあおい)➔ タチアオイの古名。 (原文) 桜 〇遠州梅多而桜不多見也。官舎有一樹所謂楊貴妃者、 花過艶、余不好也、 因求単弁称山桜者、不得、 巡部日山中或見之、葉多花鮮小、不足賞焉 於園村山上見稍佳者、乃購取移庭上、 然譲都下山桜者万々 (解読) 桜 〇遠州梅多くして、桜多く見ざるなり。官舎に一樹あり。 所謂 (いわゆる) 、 楊貴妃 (ようきひ) は、花艶 (あでや) か過ぎ、余、好まざるなり。 因 (よ) って、山桜と称する単弁ものを求め、得ず。 巡部 (じゅんぶ) の日 、 山中ある時これを見る。葉多く花 鮮小 (せんしょう) 、 賞 (めで) るに足らざるな り。 園村の山上において見、稍 (やや) 佳 (よ) きもの、 乃 (すなわ) ち購 (あがな) い取り、 庭上に移す。然し、都下山桜に 譲 (ゆず) る もの、 万々 (まんまん) 。 (語注) ※ 楊貴妃(ようきひ)➔ ...

「蕉園渉筆」(漢文)を読む(37)天狗/同(天狗二題)

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これは見栄えよく咲いた庭のタカサゴユリ 2026.8.20 昔の人は天狗に何をみていたのだろうか。 「 蕉園渉筆」には天狗の話がよく出てくる。 「 蕉園渉筆」解読の続きを載せる。 *********************************************************************** (原文)  天狗 〇堂山邑、文蔵、一日過落居村漁家、入夜而帰、 恵大鯔魚乃携沿海而去、 適見赤火自空中来、 所謂天狗火也、怯而蔵岸上船底、伏念仏名、 振々動船甚急、以為欲魚乃抛与之、須臾如去、 出而窺之、魚在岸上唯抉取両眼耳 (解読) 天狗 〇堂山邑 (むら) 文蔵、一日落居 (おちい) 村の漁家 (ぎょか) で過ごし、夜に入りて帰る。 大鯔魚 (ぼら) に恵まれ、乃 (すなわ) ち海に沿って、携 (たずさ) えて去る。 適 (たまたま) 赤い火、空中より来たるを見る。所謂 (いわゆる) 天狗火なり。 怯 (おび) えて岸上 (がんじょう) 船底に蔵 (かく) れ、伏せ仏名を念ず。 振々 (ぶるぶる) 船動き、甚急 (じんきゅう) 。 以為 (おもえらく) 魚を欲す、 乃 (すなわ) ち、これを抛 (なげう) ち与 (あた) う。須臾 (しゅゆ) に去る如し。 出でてこれを窺 (うかが) う。魚は岸上に在り。唯 (ただ) 両眼を抉 (えぐ) り取るのみ。 (語注) ※ 漁家(ぎょか)➔ 漁業をして生計をたてている家。 ※ 天狗火(てんぐび)➔ 日本各地に伝承のある怪現象。怪火の一種で、主に水辺に現れるとされる。 ※ 岸上(がんじょう)➔ 岸辺。岸のほとり。 ※ 甚急(じんきゅう)➔ さし迫る。 ※ 以為(おもえらく)➔ 思っていることには。考えるには。 ※ 須臾(しゅゆ)➔ 短い時間。しばらくの間。ほんの少しの間。 (原文) 同(天狗 二題 ) 〇相良平田坂井等海上、天狗時々捕魚、燃赤火翌往見之、 魚数頭在岸上砂磧中、皆抉取両目、人怯無拾取者、云。 〇相良波津者、途中見天狗頂所蹋草鞋、伏地、天狗速去矣 (解読) 同(天狗二題) 〇相良、平田、坂井等、海上、天狗時々魚を捕る。赤火燃え、 翌 (あくるひ) 往き これを見るに、魚数頭 (すうとう) 、岸上 (がんじょう) 砂磧 (しゃせき) 中に在り。 皆、両目抉 (えぐ) り取り、...