昔、昆虫少年だった(2)夏はキリギリス
夏はキリギリス
『ぎーす、ちょん』と鳴く
(ネットより写真拝借)
昔はコオロギのことをキリギリスと呼んでいた
2025.8.31
子供の頃、夏にキリギリスが鳴き始めると、必ず捕りに行った。はじめは次兄に付いて行って、そのうちに一人でも行くようになった。
キリギリスは昆虫採集ではない。飼うのが目的である。父の日曜百姓についてゆくと、畑は円山川の土手の近くだった。土手まで行けば、あちこちでキリギリスの鳴き声が聞こえて賑やかである。縄張りを主張するのか、メスを誘うのか。そう、鳴くのはオスだけで、目的はキリギリスのオスである。メスはお腹から剣(産卵管)が突き出ていて、すぐに分かる。
土手の背の高い草むらで鳴き声がする。近づくと声が止む。人の気配を察するのであろう。それを、さらに近づけば、長い後ろ足で跳んで逃げてしまう。そうなると、もう見つけることは難しい。
鳴き止んだら、そのまま動かずじっと待つと、再び鳴き始める。声の場所に目を凝らすと、ススキの葉に居た。羽根を振わせて「ぎーー」と鳴く。必ずしも「ちょん」が入るわけではないというが、自分のオノマトペは「ぎーす、ちょん」である。
虫網を振るって捕まえるのであるが、相手はなかなかすばしっこい。何度か失敗し、新たな声の方へ行く。何とか捕獲したキリギリスは、虫かごに入れて持ち帰る。一匹だけでよかった。虫がごのまま、家の小さな庭に面した軒先につるす。しばらくして、慣れてくると鳴き始める。「ぎーす、ちょん」ひと間おいて「ぎーす、ちょん」。夏を感じる。キリギリスの鳴き声が無くても夏なのだが、我が家にとっては、その声が夏の象徴であった。
エサは、スイカの食べ残し、キュウリ、ナスなどを与えて、ひと夏を我が家で過ごして、鳴き声を聞かせてくれた。
我が故郷の兵庫県豊岡市ではこの夏の猛暑日(最高気温が35度以上の日)が40日を超えて、1918年の統計開始以来、猛暑日の日数が最も多くなったと聞く。これはまだ、夏がそれほど暑くなかった頃の話である。いま、故郷のキリギリスたちは元気にしているだろうか。
「キリギリ元気でス」、ならいいが。
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