駿河古文書会、AI利用はルール違反だろうか
「御感」の文字のある古文書
2025.10.5
昨日に続いてもう一つ、写真は一昨日の駿河古文書会の課題の一部である。駿府で弘化三年(1846年)に出された御触れの一節で、出火の際、隣家の老婆を背負って助けた新太郎という男性を、殿様が感心して、誉めたという内容である。ここで解読で問題になったのは、後ろから四行目、「御殿様、御▢に、御誉め下し置かれ候。」とある▢の一文字であった。
講師は「尤」と読んだが、「直」ではないかとの意見が出た。 「御殿様、御もっともに、御誉め下し置かれ候。」(意味がいまいち)
「御殿様、御直に、御誉め下し置かれ候。」(「直接に」の意で意味は通る) ただ、「尤」も「直」も、文字が違うように思えた。そこで、自分が時々頼るAIの文字検索を使ってみた。
AIが手書きの文字に、七つの文字案を示してくれたので、意味を考えると、ここでは「感」の文字が良さそうである。今度は「御感」を検索してみると、
※ 御感(ごかん)― 中世、戦功を賞して主君などが与える賞状。
御感の御書。
これだなと思う。これを採用して、以下へ解読をしてみた。
(解読) (読み下し)
追加 追加
一 去月廿日暁、研屋町長右衛門 一 去月二十日暁、研屋町長右衛門
一 去月廿日暁、研屋町長右衛門 一 去月二十日暁、研屋町長右衛門
留主宅出火之砌、同人老母 留主宅、出火の砌り、同人老母
壱人罷在候所、隣家新太良 壱人罷り在り候所、隣家新太郎
壱人罷在候所、隣家新太良 壱人罷り在り候所、隣家新太郎
背負、立退助ヶ候ニ付、 背負い、立ち退き助け候に付、
殿様御感ニ、御誉被下置候。 殿様御感に、御誉め下し置かれ候。
難有仕合奉存候旨、研屋町 有り難き仕合せ存じ奉り候旨、研屋町
丁役人ゟ、昨十一日、届有之 町役人より、昨十一日、届けこれ有り
丁役人ゟ、昨十一日、届有之 町役人より、昨十一日、届けこれ有り
候間、御達し申候、已上。 候間、御達し申し候、以上。
つまり、殿様は賞状、あるいは書簡に書いて誉めたということになる。口頭での誉め言葉よりも随分重みがある。ふつうはここへ御褒美が付くのだろうが、ここではその記載はない。
古文書解読に、AIを利用するのはどうかと思うけれども、こういう時代なんだろう。ただ、候補の中で選ぶのは人間だから、古文書解読をAIに任せられるのは、まだまだ先のことであろう。
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