「蕉園渉筆」(漢文)を読む(2)

庭のグラジオラス

2026.6.23

「蕉園渉筆」を読み始める。

(原文)

遠州灘、御前崎破船
 遠州有五港、曰川崎、曰相良、曰新井、曰福田、曰

横須賀。而其実非港也。共皆官船貢運所

発、固有港名、勢之鳥羽、至于豆之下田、大

海七十五里、無一処を泊船、所謂七十灘、扶桑

第一嶮灘也。況厩崎洋中、巉巌屹立者五六

十、伏水底者、不知其数也、西州、上自貢運、

下は至賈舶、其達江都、必皆由焉、迅雨暴風、

漂於狂瀾、触悪巌、闇夜最為、自古覆没死

亡之患、其余財貨之失、不知其幾千万也、此

危灘而無澳港、可謂闕典矣

(解読)

遠州灘、御前崎破船

遠州五港有り。曰(いわ)く川崎、曰く相良、曰く新井、曰く福田、曰く横須賀。而(しか)してその実、港(みなと)に非(あら)ざるなり。共に皆、官船(かんせん)貢運(こううん)の発する所、固有(こゆう)の港の名。伊勢の鳥羽から伊豆の下田に至る、大海七十五里、船を泊める処一つも無し。所謂(いわゆる)七十灘、扶桑(ふそう)第一の嶮しい灘なり。況(いわん)厩崎(うまやざき)洋中、巉巌(ざんがん)屹立(きつりつ)は五六十、水底(みなそこ)に伏すは、その数知れざるなり。西州(西国)の、上は貢運より、下は賈舶(こはく)に至り、その江都(こうと)に達する、必ず皆、(以下の)(よう)なり。迅雨(じんう)暴風、狂瀾(きょうらん)に漂(ただよ)い、悪(あ)しき巌(いわお)に触る。闇夜は最も甚(はなはだ)しくして、古(いにしえ)より覆没(ふくぼつ)死亡の(かん)、その余財貨の失、その幾千万知らざるなり。この危うい灘に澳港(いくこう)なし。闕典(けつてん)と謂(い)うべし。

(語注)
※ 官船(かんせん)➔ 官有の船舶。
※ 貢運(こううん)➔ 年貢を運ぶ。
※ 固有(こゆう)➔ そのものだけに限って有るさま。
※ 扶桑(ふそう)➔ 日本の異称。
※ 厩崎(うまやざき)➔ 御前崎のこと。
※ 巉巌(ざんがん)➔ 切り立った険しいがけ。高くそびえた岩。
※ 屹立(きつりつ)➔ 山などが高くそびえ立つこと。
※ 賈舶(こはく)➔ 商業に用いる船。商船。あきんどぶね。
※ 江都(こうと)➔ 江戸の異称。
※ 迅雨(じんう)➔ 激しい雨。
※ 狂瀾(きょうらん)➔ 荒れ狂う大波。
※ 覆没(ふくぼつ)➔ 船などが転覆して沈むこと。
※ 患(かん)➔ わざわい。
※ 澳港(いくこう)➔ 港。
※ 闕典(けつてん)➔ 制度、規則などが不完全なこと。欠点。
(続く)

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