「蕉園渉筆」(漢文)を読む(9)七奇七奇

その一 桜ヶ池のお櫃納め(ネットより借用)

 2026.7.4

「蕉園渉筆」解読の続きを載せる。遠州七不思議の話。少し長くなるが、一気に載せる。

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 (原文)

七奇七奇

州人称七奇者、其一為佐倉邑神会、邑有古池、昔永空阿闍梨、

待弥勒出現、自投為竜之処、傍有旧祠、曰佐倉明神、

秋彼岸、以中日祭焉、遠近奉飯器、祈疾病、若他所求、

廟令炊礱飯盛之、享於神前、土人数輩、斎七日、午時来撤之、

裸体抱以投池中、遊泳至于水心、両手環器、圧而竦脚、俯伏、器沈水底、

然後、又遊泳而去、随器数、如此者数矣、伝称歴三五日浮者、

其所祈有応、即時浮者無験、

其二為天狗火、暗夜飛空中、雨夜最多、色深赤。一火忽然散満於四野、

其三為参沢三度栗、夏秋再熟、冬日雪中亦熟、

其四為中山夜啼石、石当路而立、夜呼行人悲哭、

其五為相良波響、不由風、而東西移響、

其六為日坂湧井、昔僧空海、過駅渇乞水、駅中無井、一婦人数里搬運、

空海擲錫於其舎前、寒泉忽然湧出、

其七為高脚巌、在波津東南洋中、出水丈許、濶可布十莚、祈雨有応、

舟而上之、若人、溺之巨涛立狂、為之所没、必有雨濯其穢、可謂皆奇矣

 (解読 その一)

七奇七奇

州人(遠江の人)、七奇(七不思議)と称すもの、その一、佐倉邑(むら)神に会う。

邑に古池有り。昔、永空阿闍梨(あじゃり)、弥勒(みろく)出現を待ち、自らを

竜のために投ずるの処、傍らに旧祠(きゅうし)あり。佐倉明神と云う。秋彼岸、

中日を以って祭る遠近より飯器(はんき)を奉(ほう)ず。疾病、若(もし)くは

(ほか)所求(しょぐ)を祈り、廟(祠)へ、炊礱(すいろう)に飯を盛らしめ、神前に

(きょう)す。土人(どにん)数輩(すうはい)、斎(いつき)七日、午時(ひるどき)来たり、

これを撤(とりさ)げ、裸体で抱え、以って池中に投ず。遊泳、水心(すいしん)

至り、両手で器を環(めぐ)らし、圧して脚を竦(すく)ませ、俯伏(ふふく)し、

(うつわ)を水底(みなそこ)に沈む。然(しか)る後、又遊泳して去る。

器数(うつわかず)に随い、かくの如きもの数(かぞ)う。伝え称す、三、五日

(へ)て浮ぶもの、そこの祈り応じ有り。即時(そくじ)浮ぶもの験(ききめ)なし。

(語注 その一)

※ 阿闍梨(あじゃり)➔ 弟子たちの模範となる高僧の敬称。
 ※ 旧祠(きゅうし)➔ 古いほこら。※ 飯器(はんき)➔ 飯を入れておく容器。
 ※ 所求(しょぐ)➔ 求める所。極楽浄土。
 ※ 炊礱(すいろう)➔(不明)こしき? ならば「蒸籠(せいろう)」
 ※ 享す(きょうす)➔ 供える。
 ※ 数輩(すうはい)➔ 数人
 ※ 斎七日(いつきなのか)➔ 七日間、心身を清めて神に仕えること。
 ※ 水心(すいしん)➔ 池の中央
 ※ 俯伏(ふふく)➔ うつ伏せる。

(解読 その二)

その二、天狗火(てんぐび)として、暗夜空中を飛ぶ。雨の夜、最も多い。

色深き赤。一火、忽然(こつぜん)、四野(しや)に散満(さんまん)す。

(語注 その二)

※ 天狗火(てんぐび)➔ 日本各地に伝承のある怪現象。怪火の一種で、主に水辺に
 現れるとされる。
 ※ 四野(しや)➔ 四方の野原。
 ※ 散満(さんまん)➔ 散り広がること。

(解読 その三)

その三、参沢三度栗として、夏秋再熟し、冬日雪中また熟す。

(語注 その三)

※ 参沢三度栗(さんざわさんどくり)➔ 菊川市三沢にあった、一年に三度実る栗の木。

(解読 その四)

その四、中山夜啼石として、石当路(みち)に立つ。夜、哭(な)き悲しみ、

行く人を呼ぶ。

(解読 その五)

その五、相良波響として、由(よし)無き風、而(しか)して東西に移り響く。

(解読 その六)

その六、日坂湧く井として、昔、僧空海、駅過ぎ、渇き、水を乞う。駅中

井戸無く、一婦人数里、搬運(はんうん)す。空海その舎の前に、錫(しゃく)

(なげう)つ。寒泉(かんせん)、忽然(こつぜん)と湧き出す。

(語注 その六)

※ 搬運(はんうん)➔ はこぶこと。運搬。
 ※ 錫(しゃく)➔ 道士や僧が用いるつえ。錫杖。
 ※ 寒泉(かんせん)➔ 冷たい泉。

その七 高脚巌(相良沖、愛鷹岩)(ネットより借用)

(解読 その七)

その七、高脚巌(あしたかいわ)として、波津東南洋中に在り。水に出る

一丈(約三米)許り、濶(ひろさ)十莚(むしろ)(し)くべし。祈雨(きう)(おう)有り。

舟にてこれ(高脚巌)に上がる若人、巨涛(きょとう)立ち狂い、これに溺(おぼ)る。

これを為し没する所、必ず雨有り。その穢れを濯(すす)ぐ。

所謂(いわゆる)、皆な奇(七不思議)なり。

(語注 その七)

※ 十莚(じゅうむしろ)➔ 莚十枚広げた広さ。莚一枚は、幅約三尺に長さが約六尺。
 ※ 祈雨(きう)➔ 降雨を神仏に祈ること。あまごい。
 ※ 巨涛(きょとう)➔ 大きな波。大波。

続く)

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