「蕉園渉筆」(漢文)を読む(64)紙鳶/川崎花山

 
相良凧

2026.9.19

午前、初心者、午後、経験者と、金谷宿大学「古文書に親しむ」2講座を実施した。この頃は、漸く気を楽に講座が進められる余裕が生まれたような気がする。ただ、2講座の日は、疲れが倍に感じるのは歳のせいか。

蕉園渉筆」解読の続きを載せる。

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(原文)

紙鳶

遠州弄紙鳶、始於十二月至五月六日而止、形与都下紙鳶殊矣、

図画分際尽裁去露骨、々如篭、飾以錦天鵝絨類、相良稍質、

掛川甚文、一紙鳶価用数金云

(解読)

紙鳶

遠州、紙鳶(しえん)を弄(もてあそ)ぶ。十二月に始め、五月六日に至り止む。

形、都下紙鳶(たこ)と殊(こと)にする。図画分際(ぶんざい)を尽し、裁去(さいきょ)し、

骨を露(あらわ)にする。骨、篭(かご)のごとく、錦(にしき)、天鵝絨(ビロード)類を

以って飾り、相良稍(やや)(しつ)、掛川甚だ(あや)、一と紙鳶(たこ)の価(か)

数金(両)を用うと云う。

(語注)
※ 紙鳶(しえん)➔ 凧(たこ)のこと。
 分際(ぶんざい)➔ それぞれに応じた程度。ほど。
※ 裁去(さいきょ)➔ 裁ち切って除く。
※ 質(しつ)➔ 飾り気がない。
※ 文(あや)➔ いろどり。美しさ。見事さ。

(原文)

川崎花山

今茲乙酉二月川崎後山一民先花時栽桜三五種、十数日之際不期而植者遠近数百人、

山之後背桜凡千七百株、桃百余株、至三月尽華、余往観焉、自遠眺之成雲成霞、

稍上花益艶、香益喫(潔)、花間隔大海、豆之諸山青如染、

駿之富嶽雪嶺挺然于其巓与花相映発、又帆影隠見於林表、奇不可言、実壮観也

(解読)

川崎花山

今茲(ここ)、乙酉(きのととり)二月(文政8年、1825)、川崎後山、一民(民家)先、花時、

桜三、五種栽(う)え、十数日の際(あいだ)、期せずして、植える者、遠近数百人。

山の後背(こうはい)、桜凡(およ)そ千七百株、桃百余株。三月に至り尽(ことごと)

(はな)。余、観(み)に往く。遠くよりこれを眺むに雲になり霞になり、

(やや)上の花、益(ますます)(つやや)か、香り益(ますます)(きよ)し。

花間に大海を隔て、豆(伊豆)諸山(しょざん)青く染まるが如し。

駿(駿河)の富嶽雪嶺(せつれい)挺然(ていぜん)その巓(いただき)、花と相映(は)

(あらわ)る。また帆影(ほかげ)林表(りんぴょう)に隠れ見え、

奇不可言(きふかげん)、実に壮観なり。

(語注)
※ 後背(こうはい)➔ うしろ。背後。
※ 諸山(しょざん)➔ 多くの山々。
※ 挺然(ていぜん)➔ 他にぬきんでているさま。
※ 林表(りんぴょう)➔ 林の向こう。
※ 奇不可言(きふかげん)➔ 奇(く)しきこと、言葉に出来ない。

(続く)

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