「蕉園渉筆」(漢文)を読む(52)大沢寺
2026.9.7
大雨が続き、関東や東北は大変なようだ。当地は雨は降っているが、降ったりやんだりで、危険な降り方ではない。幸いと云うべきであろう。一日、水曜日(まきのはら塾)、木曜日(掛川古文書講座)の準備に掛り、ほぼ終えた。
「蕉園渉筆」解読の続きを載せる。
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(原文)
大沢寺
波津大沢寺火宅僧也、現住好吟詩、屡相往来、寺父祖以来無男子、以義子嗣焉、
現住挙一男児、喜甚、令余名之、作其説後寄文稿於東都諸友乞正、中有此説、
白藤批曰、惜哉名冒、 儲宮之諱、余大愧、告現住請更名、曰所賜高作既已裱飾、
不欲改作、彼方外之士、余亦不強言、現住名祐賢、字曰義誉
(解読)
大沢寺
波津の大沢寺、火宅(かたく)の僧なり。現住(げんじゅう)、吟詩(ぎんし)を好み、
屡(しばしば)、相(あい)往(ゆ)き来(き)す。寺父祖(ふそ)以来、男子なく、義子(ぎし)を
以って嗣(つ)ぐ。現住一男児を挙(あ)ぐ。甚だ喜び、余にこの子の名を令(れい)す。
その説(せつ)を作(な)した後、文稿(ぶんこう)を東都(江戸)の諸友に寄せて、正(ただ)す
を乞う。中にこの説あり。白藤(しらふじ)批(ひ)して曰く、「惜(お)しき哉(かな)、
名を冒(おか)す、 儲宮(もうけのみや)の諱(いみな)。」余(よ)大いに愧(はじ)る。
現住に告げ、更名(こうめい)を請(こ)う。曰く、「賜わる所、高作(こうさく)に
して、既已(すで)に裱飾(ひょうしょく)す。改作を欲せず。彼方(あちら)は外(ほか)の
士(ひと)。」余(よ)また強いて言わず。現住の名、祐賢、字(あざな)義誉と曰(い)う。
(語注)
※ 火宅(かたく)➔ 煩悩や苦しみに満ちた、この世のたとえ。
※ 現住(げんじゅう)➔ 現在の住職。
※ 吟詩(ぎんし)➔ 詩を吟詠すること。
※ 父祖(ふそ)➔ 代々の先祖。
※ 義子(ぎし)➔ 義理の子。養子や、息子・娘の配偶者など。
※ 令す(れいす)➔ 言いつける。命ずる。
※ 説(せつ)➔ すじみちを立てて述べられた考え・意見・説明・解釈など。
※ 文稿(ぶんこう)➔ 草稿。
※ 儲宮(もうけのみや)➔ 東宮。皇太子のこと。
※ 諱(いみな)➔ 本名。生前の名で、その死後人々がいう。
※ 更名(こうめい)➔ 改名。
※ 高作(こうさく)➔ 立派な作品(名前)。他人の作品を敬っていうのに用いる。
※ 裱飾(ひょうしょく)➔ 表装して飾ること。
※ 彼方は外の士 ➔ あっちはあっちで関係ない、の意。
※ 字(あざな)➔ 実名のほかに人々が呼びならわしている別名。通称。
(続く)
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