自分古文書(2)「赤い発光体」6
” 赤い発光体 ” (ネットから部分拝借) 2025.7.31 昨日の津波警報は注意報となり、その解除は今日まで掛かった。昨夜は興が乗って、一冊朝まで掛かって読み終えてしまった。だから、今日は一日、朝寝、昼寝で過ぎた。 自分古文書「赤い発行体」の第6回を載せる。次回で終りとなる。 *********************************** 赤い発光体 6 いつか、彼女たちに別れの言葉を言ったことなどすっかり忘れて、側の草の上に腰を下ろしていた。彼女たちはよく笑い、よくしゃべった。話題は最初のうちは各々の趣味についてであったが、多賀子が読書が趣味だと聞いてから、いつか小説に話題が変わり、本を読んだときの感動などの話になった。八重は川端康成の『伊豆の踊子』を読んだ時、踊子の純情さに心を打たれたと言った。多賀子は谷崎潤一郎の『細雪』の、源氏物語を思わせる美しい流れるような文章が素晴らしかったと話した。いずれも公式通りの感想ではあったが、彼女たちの言葉に偽りはなかった。私も夏目漱石の『草枕』の非人情の精神に魅力を感じると語った。 ふとしたことから先生の悪口へ話が落ち、わが校の男子と××女子高校の女学生の怪しげな噂から、映画俳優の顔の善し悪しの話に落ちてしまった。初めの内はよくしゃべっていた私も、話が落ちてくるにつれて黙りがちになり、ついに会話がぷっつりと途絶えてしまった。沈黙の後、気不味い空気を破るように多賀子が切り出した。 「もうそろそろ下らなくっちゃ。井川さん!私、まだあんまり足が大丈夫じゃないんです。下まで一緒に降りてくれませんか」 私は喜んで一緒に降りることを承知した。 「降りるなら、頂上まで登って向こう側から下った方が良い。道もいいし距離も短いから」と私は櫓の方を指差して言った。 案内すべく先頭に立って登る。多賀子も少し痛そうにしていたが、十分歩けそうであった。櫓の下で多賀子のためにしばらく休憩した。空はいつの間にか雲が無くなって、底が抜けているように深い。登ってきた方とは反対の、先程逃げ出そうと思った時使うつもりであった道が、そこだけ灌木の切れ目が出来て、ぽっかりと穴が開いているように見える。 「さっ、それじゃあ降りようか」 私は彼女たちが水筒からお茶を飲み終わるの待って言っ...